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てんかんの治療

2013年5月 7日 (火)

Dravet(ドラベ)症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)にBuccolam(ブコラム)を

Dravet(ドラベ)症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)では、
入浴による体温上昇や、風邪などによる発熱により、
しばしば「てんかん重積発作」をおこしてしまいます。

自宅におきましては、
ジアゼパム坐剤(ダイアップ)
抱水クロラール坐剤、注腸用キット(エスクレ)
などを使用しての対応となりますが、
なかなか対応が困難であるのが現状です。

私にはひとつの考えがあります。

みなさんは、
Buccolam」という薬をご存知でしょうか?

VIROPHARMA: BUCCORAM
http://www.buccolam.co.uk/welcome/

日本にはまだありませんが、
欧州では2011年に認可されています。

これは、
口腔内粘膜投与用の「ミダゾラム(ドルミカム)です。

6か月から18歳までの、
てんかんと診断された患者さんが処方をうけることができ、
てんかん発作が出現した際に保護者が投与することができます。
(3か月から6か月までの患者さんは病院内での投与のみ)

投与法は簡単で、
キャップを空けて口のわきに流し込むだけです。

VIROPHARMA: BUCCORAM
How to administer BUCCOLAM
http://www.buccolam.co.uk/downloads/BUCCOLAM-administration-leaflet.pdf

日本におきましても、
病院内における「てんかん重積発作」の対応として、
特に静脈路(点滴)が確保できない場合に、
ミダゾラム(ドルミカム)」を鼻粘膜や口腔内粘膜に投与することが、
一部の施設で実施されるようになってきました。

しかし、
日本におきましては、
鼻粘膜・口腔内粘膜投与はおろか静脈投与でさえも、
いまだに「保険適応」となっておらず、
患者さんと医師の「自己責任」で投与しているのが現状です。

私たち医師は、
Dravet(ドラベ)症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)では、
ジアゼパム」や「抱水クロラール」よりも、
ミダゾラム(ドルミカム)」のほうが、
はるかに効果を発揮することを経験しています。

その理由として、
ミダゾラム(ドルミカム)」には、
前回記事で説明しました、
「休ませる神経(抑制性神経)」の働きを助ける、
とても強力な作用があるからです。


参考:
Dravet(ドラベ)症候群(乳児重症ミオクロニーてんかん)とは?
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/dravet-304d.html

日本におきましては、
Buccolam」を入手することはできません。
ミダゾラム(ドルミカム)」は、
抗精神薬に分類されているため、
「個人輸入」も規制されています。

日本におきましても、
(世界の主流である静脈投与さえ、
いまだに「保険適応」が認可されていない現状ではありますが)
Buccolam」が早期に使用できるようになるよう、
私も働きかけてまいりたいと存じますので、
みなさんからのお力添えや働きかけをどうかよろしくお願い申し上げます。

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2013年2月 2日 (土)

てんかんとケトン食療法の歴史:発展期

久々の更新となってしまいました。
深くお詫びを申し上げます。

この記事は、
「てんかんとケトン食療法の歴史:黎明期」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/post-4e10.html
の続きになります。

1921年に「ケトン食療法」が始まりましたが、
その当時のケトン食の組成は、

1日あたり
・10gから15gの炭水化物(糖質)
・体重1kgあたり1gのタンパク質(蛋白質)
・それ以外は脂肪(脂質)

であり、
すでに現在とほぼ同様の組成でした。

その後、
最適なケトン食の組成が模索され、
ハーバード大学のTalbot先生により、
脂肪を4gに対して炭水化物とタンパク質を合わせて1gとする、
4対1ケトン食療法」が確立されました。

なお、
その当初は、
ケトン比」あるいは「ケトン指数」(いずれもKeto
genic Ratio)として、

ウッドヤットの式
(0.46タンパク質[g]+0.9脂肪[g])/
(炭水化物[g]+0.58タンパク質[g]+0.1脂肪[g])

が使用されていましたが、
計算が非常に煩雑となるため、
その後は、

Talbot先生による
(脂肪[g])/(炭水化物[g]+タンパク質[g])

が使用されるようになりました。

なお、
諸外国での「ケトン比(Ketogenic Ratio)」の算出は、
後者が一般的になりますが、
日本での「ケトン指数(Kegogenic Ratio)」の算出は、
後者の場合もあれば前者の場合もあり、
両者で計算結果がやや異なるため、
混乱しないように注意が必要です。

私個人とし
ましては、
・後者の方が簡便であること
・諸外国の教科書、論文、調理本は後者のみ使用していること
から、
後者を使用しており、
今後は日本でも後者に統一されていくものと推察しております。


1921年の当時には、
抗てんかん薬としては、
・臭化カリウム
・フェノバルビタール
のわずか2種類しかありませんでした。
いずれの抗てんかん薬も、
現在では「第1選択薬」ではなくなっています。

ですので、
1920年代から1930年代にかけて、
このケトン食療法は、
広く受け入れられるようになりました。

続きます。

<警告>
「ケトン食療法」の開始時は、
さまざまな危険な副作用が出現する可能性があるため、
経験の豊富な医師により原則として入院監視下に開始されます。
くれぐれも医師の指示なしに実施しないでください。

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参考文献
Wheless JW: History and origin of the ketogenic diet.
  Epilepsy and the ketogenic diet.p31-50,2004

2013年1月19日 (土)

てんかんとつぶやき:てんかん外科手術

ツイッター」を活用することにより、
てんかんの最新情報を入手することができますし、
立場の垣根を越えてのやりとりもしやすくなります。

例えば、
昨18日(金)深夜の、
アメリカてんかん学会の「つぶやき」です。

AES @AmEpilepsySoc
“Epilepsy Surgery: A Broken Bridge Between Utility and Utilization”
by Mohamad Koubeissi, MD
http://www.aesnet.org/files/dmfile/i1535-7511-12-5-194_Clinical_Koubeissi.pdf …

てんかんの最新情報が紹介されています。

以下が概略です。


アメリカてんかん学会:
てんかん外科手術:有用性と利用率の間の壊れた架け橋

①難治性てんかん患者さん
 112,026人中6,653人(5.9%)が
 てんかん外科手術を受けた。
 白人と民間医療保険加入者が多かった。
 まだまだ利用率は低い。
 2種類の抗てんかん薬が効かなければ手術を考慮すべきである。

②2種類の抗てんかん薬が効かなかった
 内側側頭葉てんかん患者さん38人中15人が
 すぐにてんかん外科手術を受けた。
 手術2年後では
 手術と内服の15人のうち発作なしは11人であったが
 内服のみの23人のうち発作なしは0人だった。


これは、
てんかん先進国であるアメリカにおいても、
てんかん外科手術の有用性に対
して利用率はまだ低く、
それは人種や保険(貧富の差)が影響しているが、

2種類の抗てんかん薬が効かなければ、
早めに手術を考慮すべき、

という啓蒙の一環になります。

私は、
ひとりでも多くの方
見ていたただけるように、
この概略を「リツイート」させていただき、
さらに以下の「つぶやき」も追加いたしました。


てんかん外科手術は
MRI検査が「正常」でも
受けられる可能性が大いにあります。

①普通のMRI検査では
 病変が見えないことが多くあります。
 専門の病院で
 てんかん外科手術のための撮り方をして
 専門医が読み取ると初めて見えることがあります。

②病変が見えなくても
 入院長時間脳波、SPECT、PET、脳磁図検査などで
 焦点がわかることがあります。
 焦点がわかれば
 頭蓋内脳波検査で確かめて
 手術を受けられることもあります。



また、
最近では他の医師、患者さんや報道機関などと、
運転免許」や「就職」などの問題について、
やりとりをすることも多くなってきました。


ホームページは「静的」、
ブログでは「準静的(準動的)」、
ツイッターでは「動的」、
な情報を交換することができます。

みなさんも、
ツイッター」で「てんかん」についてつぶやいてみませんか?
@kodomonotenkanのフォローもお待ちしております。

以前の記事も参考にされてください。

「てんかんとつぶやき」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-fbc7.html

「てんかんとつぶやきのニュース」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-2fab.html

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2013年1月16日 (水)

てんかんとケトン食療法の歴史:黎明期

てんかんケトン食療法の歴史は、
はるか紀元前にまでさかのぼります。

古代ギリシアの医師であり、
「医学の父」とよばれている、
ヒポクラテス(紀元前460年頃~370年頃)は、
神聖病」と呼ばれていたてんかんを、
「神の病気」ではなく「脳の病気」であるとし、
断食」により治療したとする記述があります。

また、
聖書の「マタイによる福音書」などにも、
てんかんを「断食」により治療せよという記述があります。

参考
「てんかんと聖書とケトン食療法」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-c5d6.html

そのことからは、
古来より一部の人々は、
てんかんには「断食」が有効な場合があることを、
知っていたと考えられています。

その「断食」が、
近・現代医学に登場したのは、
20世紀の初頭になります。

1911年に、
フランスの内科医であるGuelpa先生とMarie先生が、
てんかん患者さんに4日間の「絶食(断食)」を実施し、
てんかん発作が改善したことを報告しました。

また、
1921年には、
アメリカの内分泌科医であるGeyelin先生が、
てんかん患者さん
に20日間にもおよぶ「絶食(断食)」を実施し、
てんかん発作が改善したことを報告しました。

さらに、
同1921年に、
シカゴのWoodyatt先生が、
絶食もしくは極端に炭水化物を少なく脂肪を多くした食事で、
体の中に「ケトン体」が生成されることを報告しました。

なお、
このWoodyatt(ウッドヤット)先生は、
ケトン指数」を計算する「ウッドヤッドの式」で有名です。

ウッドヤットの式
(0.46タンパク質[g]+0.9脂肪[g])/
(炭水化物[g]+0.58タンパク質[g]+0.1脂肪[g])

そして、
同1921年に、
メイヨークリニックのWilder先生が、
極端に炭水化物を少なく脂肪を多くした食事による「ケトン血症」が、
絶食と同様にてんかん発作を改善させることを報告し、
ケトン食療法」と命名しました(文献1)。

それにより、
断食」をしなくても、
断食しているような状態」を、
維持することができるようになりました。

続きます。


<警告>
「ケトン食療法」の開始時は、
さまざまな危険な副作用が出現する可能性があるため、
経験の豊富な医師により原則として入院監視下に開始されます。
くれぐれも医師の指示なしに実施しないでください。

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参考文献
[1] Wheless JW: History and origin of the ketogenic diet.
  Epilepsy and the ketogenic diet.p31-50,2004

2013年1月12日 (土)

鼻水には鼻水止めか?:てんかんと抗ヒスタミン薬

この記事は、
「風邪には風邪薬か?:First do no harmの意味」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2013/01/first-do-no-har.html
の補足になります。

ちなみに、
病院で処方される「鼻水止め」はどうでしょうか?

鼻水止め」としては、
一般的に「抗ヒスタミン薬」が処方されます。

ただ、
抗ヒスタミン薬けいれんとの関連が示唆されているため、
熱性けいれん」や「てんかん」があると、
処方が控えられることが多いと思います。

風邪」をひいて鼻水が出るのに、
鼻水止め」が処方されないために、
がっかりされる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、
そもそも「風邪」の鼻水に「鼻水止め」は必要でしょうか?
(「アレルギー性鼻炎」は別ですのでまた書きます)



治療には根拠が必要です。
偶然でもプラセボ効果でもないことの確認が必要ですし、
「有益」が「有害」を上回ることの確認が必要です。


その情報は、
「The Cochrane Database of Systematic Reviews」
で入手することができます。

ここには、
それまでの膨大な医学研究が集約され吟味されているため、
医学の根拠を確認するのに必須のものです。

参考
Wikipedia:コクラン・コラボレーション
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%83%9C%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3#.E3.82.B3.E3.82.AF.E3.83.A9.E3.83.B3.E3.83.BB.E3.83.A9.E3.82.A4.E3.83.96.E3.83.A9.E3.83.AA


そこで翌2009年に公表された、
「風邪に対する抗ヒスタミン薬」という文書では、
8930人の風邪をひいた大人と子どもについて解析され、
最終的に、

・抗ヒスタミン薬では、
 鼻水や鼻づまりなどの臨床経過や自覚症状を改善しない
・第1世代の抗ヒスタミン薬は、
 特に眠気の副作用の原因となる

と結論づけています。

参考(英文)
Pubmed:
Antihistamines for the common cold.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19821274

もちろん、
これは大規模な検討ですので、
お一人お一人に効果がないことを意味しませんし、
(全体としてみると効果がないということです)
全ての抗ヒスタミン薬に効果がないことを意味しません。
(一部では“少し”効果があったとの結果です)

また、
これが唯一の結論ということではありません。

ですが、
この結論からしても、
わざわざ処方されなくてもよさそうです。

最近では処方しない医師も多いと思われます。

私個人としましては、
風邪の鼻水に鼻水止めの処方はお勧めしていませんし、
自分の子どもにも飲ませたことはありません
し、
自分でも飲みません。

アレルギー性鼻炎の鼻水は別です)

なお、
2012年に公表された、
「風邪に対する抗ヒスタミン薬・充血緩和薬・解熱鎮痛薬
 の経口複合薬」(さむ註:市販の風邪薬
という文書では、
最終的に、

・年長の小児と大人には、
 いくらかの一般的な有益性
あるが、
 副作用の危険性との兼ね合いをよく考えるべきである
・年少の小児には効果があるという証拠はない

と結論づけています。

参考(英文)
Pubmed:
Oral antihistamine-decongestant-analgesic combinations for the common cold.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22336807


ですので、
私個人としましては、
風邪の子どもに市販の風邪薬
もお勧めしていませんし、
自分の子どもにも飲ませたこともありませんし、
自分でもあまり飲みません。

ちょうど、
風邪薬などのインターネット販売
再開が話題になっていますね。

参考
毎日jp(2013年1月11日付):
薬ネット販売解禁:早速再開…安全懸念の声も
http://mainichi.jp/select/news/20130112k0000m040117000c.html

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2013年1月10日 (木)

風邪には風邪薬か?:First do no harmの意味

てんかんにおけるケトン食療法の歴史を取り上げる前に、
医学の父”であり“ケトン食療法の祖”でもある、
ヒポクラテス(紀元前460年頃~370年頃)の言葉(とされている)、


「First do no harm(まず害を成すな)」

について少し述べさせてください。

ヒポクラテス
ヒポクラテス
(ピーテル・パウル・ルーベンス作版画、1638年、アメリカ国立医学図書館蔵)
(Public domain, PD-US

参考
Wikipedia:ヒポクラテス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%9D%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%86%E3%82%B9

なお、
この言葉はケトン食療法の映画の題名にもなっています。

参考
「てんかんと映画とケトン食療法」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-0d8d.html


さて、
「風邪には風邪薬」
でしょうか?

おそらく、
子どもが風邪をひいて鼻水を出し始めると、
薬局で「風邪薬」を買う人も多いのではないでしょうか?

ところが、
2008年1月に、
アメリカの政府機関であるアメリカ食品医薬品局(FDA)は、
市販の「風邪薬」は2歳未満の乳幼児に対して、
重篤で生命に危険のある副作用が出現する可能性があることから、
使用すべきでない
とする勧告を発表しました。

参考(英文)
U.S. Food and Drug Administration (FDA):
OTC Cough and Cold Products: Not For Infants and Children Under 2 Years of Age
http://www.fda.gov/forconsumers/consumerupdates/ucm048682.htm

また、
アメリカ小児科学会も、
市販の「風邪薬」は6歳未満の小児に対して、
効果がなく、健康に危険を引き起こす可能性がある

とする声明を発表しました。

参考(英文)
American Academy of Pediatrics:
Withdrawal of Cold Medicines: Addressing Parent Concerns
http://www.aap.org/en-us/professional-resources/practice-support/Pages/Withdrawal-of-Cold-Medicines-Addressing-Parent-Concerns.aspx?nfstatus=401&nftoken=00000000-0000-0000-0000-000000000000&nfstatusdescription=ERROR%3a+No+local+token

さらに、
カナダ保健省も、
市販の「風邪薬」は6歳未満の小児に対して、
使用すべきでない
とする声明を発表しました。

参考(英文)
Canada Health:
Health Canada Releases Decision on the Labelling of Cough and Cold Products for Children
http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2008/2008_184-eng.php

なお、
それに対する日本の対応は、
以下のニュース記事を参考にされてください。

参考
薬事新報(2008年1月14日付):
【FDA】OTCかぜ薬の乳幼児への使用中止を勧告
http://www.yakuji.co.jp/entry5591.html
薬事新報(2008年7月9日付):
【厚労省】OTCかぜ薬で注意喚起”使用上の注意を改訂
http://www.yakuji.co.jp/entry7357.html

最もよくある「風邪」という病気において、
医師も患者さんも誰もが「風邪には風邪薬」と考え、
鼻水には鼻水止め、咳は咳止め」と信じ込んできましたが、
医師が処方せずともよい“弱い、軽い”「市販薬」でさえ、
風邪を治すどころか害を成すことがありえるのです。

私たち医師は患者さんを目の前にすると、
何かをしなければならないという思いにかられます

しかしながら、
良かれと信じ込んでやっていることが、
本当に益を成すのか、あるいは実は害を成してしまうのかは、
常に考え続けなければなりません。

それも、
First do no harm
のひとつの意味だと私は考えています。

それでは、
てんかんにおける「ケトン食療法」はどうでしょうか?

その歴史について書きながら、
標準医療」や「代替医療」の意味についても考えてまいります。

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2013年1月 9日 (水)

てんかんとiPS細胞:テーラーメイド治療への期待

てんかんにおける「iPS細胞」は、
乳児重症ミオクロニーてんかん(ドラベ症候群)
などですでに樹立されています。

てんかんにおけるiPS細胞は、
テーラーメイド(個別化)治療」にも期待されます。

2013年1月7日付のYOMIURI ONLINEのニュース記事です。

*****一部引用*****

目の難病の一つ「網膜色素変性症」の患者に投与されている
ビタミン剤は逆効果になる場合があることを、
理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの
高橋政代・プロジェクトリーダーらが
iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った実験で確かめた。

病気の原因遺伝子が患者によって違うためで、
具体的な薬効の個人差をiPS細胞で確認できたのは
初めてとみられる。
他の病気でも同様の手法で薬効を確認できる可能性があり、
iPS細胞の医療応用の一つとして注目される。

(後略)

*****

引用元
YOMIURI ONLINE:
iPSを医療に応用、薬効の個人差確認…理研
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20130107-OYT1T00590.htm?from=ylist


現在では、
お一人お一人のてんかんに対して、
どの抗てんかん薬が「最も良い抗てんかん薬」であるのか、
(発作をなくしてかつ眠気などがない抗てんかん薬であるのか)
一つ一つの薬を実際に内服するしか確認の方法がありませんし、
一つ一つの薬について数か月ずつの時間もかかります。

しかし、
血液や頬粘膜などからiPS細胞を簡単に作成できるようになれば、
いずれは、
一つ一つの薬を実際に内服しなくても、
あらかじめその効果が予測できるようになることが期待されます。

ぜひとも早急に実現したい課題です。

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2013年1月 8日 (火)

てんかんとケトン食療法:その理解のために

みなさんは「ケトン食療法」についてご存知でしょうか。

このブログでも、
「てんかんと映画とケトン食療法」
 http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-0d8d.html
「てんかんと聖書とケトン食療法」
 http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-c5d6.html
で少し取り上げました。

ケトン食は、
脂肪を増やし炭水化物とタンパク質を減らした食事です。

血液と尿の中に、
ケトン体」というものが出てくるのでその名がついています。

尿中ケトン体検査
尿中ケトン体検査(public domain, by Colin)

ケトン食療法は、
主に小児の難治性てんかんに対する治療の一種であり、
以前は“last resort(最後の選択肢)”といわれていましたが、
最近ではより早めに試みられるようになってきています。


しかし、
諸外国ではすでに45か国以上で実施されていますが
(文献1)
日本ではいまだに十分には普及しておらず、
ほんの一部の施設でのみ実施しているのが現状です。

その理由のひとつには、
患者さんやご家族のみならず、
医療従事者にも十分に理解されていないことがあります。

このブログでは、
・歴史(紀元前から現代まで)
・種類(古典型やアトキンス変法など)
・仕組み(高ケトンや低血糖など)
・作用と副作用(有効性や忍容性など)
・根拠(エビデンスなど)
・適応と禁忌(てんかんや基礎疾患など)
・実際(計算方法や調理方法など)
などについて書いていきたいと思います。

しかしながら、
あくまでも医師としての記事となりますので、
むしろ、
患者さんやご家族のみなさんのご意見がとても参考になります。

みなさんからのご意見やご要望をお待ちしています。

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参考文献
[1] Kossoff EHとMcGrogan JR: Epilepsia 2005;46:280-289.

2012年11月17日 (土)

水と空気と抗てんかん薬(補足)

この記事は前の記事の補足になります。

「てんかんの私見―水と空気と抗てんかん薬」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/post-065e.html

なお、
私たち専門家は「代替療法」を軽視してはいません。
これまでにてんかんの「代替療法」として、

・食事療法
・心理療法
・リラクゼーション療法
・漢方薬
・ビタミン薬
・鍼(はり)
・ヨーガ

などの有効性が検討されています。

しかしながら、
現在のところ「ケトン食療法」以外は有効性が確認されていません(文献1)。
(よって「ケトン食療法」は「代替療法」ではなく「確立した治療」です。)

もちろんこれらの検討は、
てんかん全体としての有効性が確認されていないだけで、
てんかんのあるお一人お一人に有効性がないことを証明するものではありません。
そして今後に有効性が確認されることがないとも言えません。
ですので、
すでに実践されている「代替療法」が、
その方にとり、
てんかんに「作用」して、かつ、「副作用」が少ないように感じ、
そして適切な「価格」であるのであれば、
また私ども専門家からみても、
てんかんや健康に悪く「作用」せず、かつ、「副作用」がなさそうであれば、
そして実施中の治療に影響がなさそうであれば、
私は強く止める理由はないように考えております。

しかしながら、
「毒にも薬にもなる」という言葉があるように、

あらゆるものにはなんらかの「作用」と「副作用」とがあると考えます。
「薬」になることを期待しているものが、
「毒」になる危険も当然ながらあり、

「薬」になる可能性と「毒」になる可能性は同等に考えなければなりません。
てんかんを良くする可能性を秘めているかもしれませんが、
てんかんを悪くする可能性も秘めているかもしれないのです。

例えば、
みなさんは「銀杏(ぎんなん)」を食べ過ぎると、
てんかん発作を起こすかもしれないことをご存知でしょうか?
てんかん発作を起こすのであって、その後にてんかんになるわけではありません。)

参考
ギンコトキシン - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AE%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%88%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%B3

そのような世の中のいろいろなもののなかから、
専門家により慎重に慎重を重ねて見極められ選ばれたものだけが、
すでに「薬」とよばれているわけです。

代替療法」を実践される方は、どうか主治医とご相談されてください。

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多くの人の目に触れてもらえるようご協力(クリック)をお願いいたします。

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参考文献
[1] Levy RGら:Ketogenic diet and other dietary treatments for epilepsy.
  Cochrane Database Syst Rev 3: CD001903, 2012.

2012年11月16日 (金)

水と空気と抗てんかん薬

てんかんの「代替療法」や、
抗てんかん薬の「副作用」について、
お問い合わせをいただきましたので、
私なりの考えを少し書きたいと思います。

私は世の中のあらゆるものに、
「作用」と「副作用」とがあると考えています。

最も身近にある「水」や「空気」はどうでしょうか?
この無色透明の液体や気体は、
私たちを生かす「作用」だけを持ち、
私たちを脅かす「副作用」は持たないのでしょうか?

水は飲みすぎると「水中毒」を起こします。
空気は吸いすぎると「過換気症候群」を起こします。
そして命を脅かすことさえありえます。
最も身近にある水や空気でさえ、
飲み方や吸い方によっては「副作用」があるのです。

それでは抗てんかん薬について考えていきます。

***話しがややそれますが***
もちろん抗てんかん薬は飲まないに越したことはありません。
私は一番の治療は「治療しなくてもいい」ことだと考えています。
実際に良性小児部分てんかんでは「無治療」も治療の選択肢となります。
しかしながら、
てんかん発作による怪我の危険や生活への支障などの「不利益」が大きく、
一方で、
抗てんかん薬の「作用」でてんかん発作が抑えられる「利益」が大きく、
かつ、
抗てんかん薬の「副作用」による「不利益」が小さく、
それらを足し合わせ、
「利益」が「不利益」を上回る場合に、
抗てんかん薬を飲むことを
勧めています。

***話しを戻します******
代表的な抗てんかん薬である「バルプロ酸」は、
セイヨウカノコソウ(バレリアン、吉草)というハーブから抽出される、
バレリン酸(吉草酸)の仲間(類似物質)になります。
「バレリアン」はハーブのサプリメントとして売られ、
「バレリン」(バルプロ酸の商品名のひとつ)は抗てんかん薬として処方されます。

世の中のいろいろなものの中から、
バルプロ酸は、
てんかん発作を抑える「作用」がとても大きく、
眠気や肝障害などの「副作用」が少なめであることから、
「抗てんかん薬」として選ばれました。
一方で、
バレ
リン酸にも、
不眠症をよくする「作用」があります。

(眠気を「作用」とみるか「副作用」とみるかは目的次第ですね。)
しかしその「作用」は大きいものではありません。
ですので「サプリメント」になりました。
それでは「副作用」はないのでしょうか?
やはり肝障害などの「副作用」は報告されているのです。

参考
セイヨウカノコソウ - Wikipedia

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BB%E3%82%A4%E3%83%A8%E3%82%A6%E3%82%AB%E3%83%8E%E3%82%B3%E3%82%BD%E3%82%A6

私の申し上げたいことは、
「薬」に選ばれ「薬」と名付けられたものだけに、
「副作用」が付いてくるということではなく、
あくまで、
その「作用」による「利益」が、
その「副作用」による「不利益」を、
はるかに上回ることが証明されたものだけが、
「薬」として選び抜かれているということです。

現在のところ、
てんかんの治療の第一は抗てんかん薬による治療です。
これは世の中のいろいろなもののなかから、
てん
かん発作を抑える「作用」が大きく「副作用」が少ないものだけが、
抗てんかん薬」として選び抜かれ、
抗てんかん薬」と
名付けられた結果です。

ですので、
そのような選び抜かれたものによる「治療」を受ける前に、
そのように選び抜かれていないものによる「治療」を試すことは、
私はお勧めはしておりません。

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