風邪には風邪薬か?:First do no harmの意味
てんかんにおけるケトン食療法の歴史を取り上げる前に、
“医学の父”であり“ケトン食療法の祖”でもある、
ヒポクラテス(紀元前460年頃~370年頃)の言葉(とされている)、
「First do no harm(まず害を成すな)」
について少し述べさせてください。
ヒポクラテス
(ピーテル・パウル・ルーベンス作版画、1638年、アメリカ国立医学図書館蔵)
(Public domain, PD-US)
参考
Wikipedia:ヒポクラテス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%9D%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%86%E3%82%B9
なお、
この言葉はケトン食療法の映画の題名にもなっています。
参考
「てんかんと映画とケトン食療法」
http://kodomonotenkan.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-0d8d.html
さて、
「風邪には風邪薬」でしょうか?
おそらく、
子どもが風邪をひいて鼻水や咳を出し始めると、
薬局で「風邪薬」を買う人も多いのではないでしょうか?
ところが、
2008年1月に、
アメリカの政府機関であるアメリカ食品医薬品局(FDA)は、
市販の「風邪薬」は2歳未満の乳幼児に対して、
重篤で生命に危険のある副作用が出現する可能性があることから、
使用すべきでない、
とする勧告を発表しました。
参考(英文)
U.S. Food and Drug Administration (FDA):
OTC Cough and Cold Products: Not For Infants and Children Under 2 Years of Age
http://www.fda.gov/forconsumers/consumerupdates/ucm048682.htm
また、
アメリカ小児科学会も、
市販の「風邪薬」は6歳未満の小児に対して、
効果がなく、健康に危険を引き起こす可能性がある、
とする声明を発表しました。
参考(英文)
American Academy of Pediatrics:
Withdrawal of Cold Medicines: Addressing Parent Concerns
http://www.aap.org/en-us/professional-resources/practice-support/Pages/Withdrawal-of-Cold-Medicines-Addressing-Parent-Concerns.aspx?nfstatus=401&nftoken=00000000-0000-0000-0000-000000000000&nfstatusdescription=ERROR%3a+No+local+token
さらに、
カナダ保健省も、
市販の「風邪薬」は6歳未満の小児に対して、
使用すべきでない、
とする声明を発表しました。
参考(英文)
Canada Health:
Health Canada Releases Decision on the Labelling of Cough and Cold Products for Children
http://www.hc-sc.gc.ca/ahc-asc/media/advisories-avis/_2008/2008_184-eng.php
なお、
それに対する日本の対応は、
以下のニュース記事を参考にされてください。
参考
薬事新報(2008年1月14日付):
【FDA】OTCかぜ薬の乳幼児への使用中止を勧告
http://www.yakuji.co.jp/entry5591.html
薬事新報(2008年7月9日付):
【厚労省】OTCかぜ薬で注意喚起”使用上の注意を改訂
http://www.yakuji.co.jp/entry7357.html
最もよくある「風邪」という病気において、
医師も患者さんも誰もが「風邪には風邪薬」と考え、
「鼻水には鼻水止め、咳は咳止め」と信じ込んできましたが、
医師が処方せずともよい“弱い、軽い”「市販薬」でさえ、
風邪を治すどころか害を成すことがありえるのです。
私たち医師は患者さんを目の前にすると、
何かをしなければならないという思いにかられます。
しかしながら、
良かれと信じ込んでやっていることが、
本当に益を成すのか、あるいは実は害を成してしまうのかは、
常に考え続けなければなりません。
それも、
「First do no harm」
のひとつの意味だと私は考えています。
それでは、
てんかんにおける「ケトン食療法」はどうでしょうか?
その歴史について書きながら、
「標準医療」や「代替医療」の意味についても考えてまいります。
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